コミカライズ『イヴの時間』感想

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アンドロイドが登場すると聞くとどんな物語を想像しますか?

私はターミネーターのようにアンドロイドが人類と敵対する話を真っ先に思い浮かべます。人類の存亡を掛けた闘いとまではいかずとも、戦闘モノを思い浮かべる人は多いのではないでしょうか。

今回読んだイヴの時間はアンドロイドと人間の共存をテーマにしている作品です。"共存"というと固い表現かもしれません。作中でメインに描かれるのはお互いを理解し合おうとする人間とアンドロイドの心の動きであって、社会全体の動きはそれらを描く背景に過ぎませんから。SFが好きな私にとってはその背景設定が面白く、また作中で細かく描かれていない分、色々と想像してしまう部分でもありましたが。

劇場版と比較すると、コミカライズ版では登場人物の心の機微をより細かく描写しているなと感じました。また、劇場版では回収されなかったいくつかの伏線が回収されていて、個人的には劇場版→コミカライズの順で鑑賞して正解だったなと思っています。最終巻の最後に作者さんのコメントが載っていますが、原作を自分の中に取り込んで昇華させるのが上手な方だなと感心しました。原作が面白い作品を他の媒体に移すのは難しい仕事だと思いますが、新しく加えられた登場人物やエピソードも物語全体の雰囲気を壊すことなくマッチしていて良かったです。

硝煙と弾丸が行き交う戦場に比べると、人間社会の中でのアンドロイドを描いた作品は一見地味ですが、芸術や愛情がアンドロイドによって代替されていくことに対する人間の心理的な反感や、人間のように振る舞うアンドロイドに対する好意あるいは恐怖などの描写はとても現実的で、ありそうな未来だと感じました。(私達の社会に普及している、あるいは今後普及していくアンドロイドは作中に現れるアンドロイドたちよりもずっとロボット的なので、アンドロイドの友人とお茶するのはまだまだ先の未来かもしれませんが)